急性肝炎 acute hepatitis
肝臓の細胞壊死を伴う急性炎症であり、その原因にはウイルス、薬剤、アルコールなどがある。もっとも多く一般的なのは肝炎ウイルスに起因したものである。
ヒトのウイルス肝炎の病因ウイルスとしては、現在5種類が確認されている(A, B, C, D, E型)。これら以外の非A-E肝炎ウイルスについても研究がなされているが、まだ解明されていない部分が多い。
ヒトの肝炎ウイルス感染のなかでは、A型肝炎ウイルスによるものが最も多い。劇症化をきたしやすいB型肝炎ウイルスは、感染自体が減少傾向である。また、C型肝炎ウイルスは感染者が多く、急性発症もみられるが、急性期症状は軽度のものが多い。
肝炎ウイルス以外のウイルス感染では、EBウイルスによるものが急性肝炎症状をきたしやすい。
ウイルスによる急性肝炎では、ウイルスが直接に肝細胞を障害するのではなく、ヒトの細胞性免疫応答による肝細胞障害が主体となっていると考えられている。
超音波所見
急性肝炎の超音波所見は、その病期や炎症の程度によりさまざまである。
- 肝腫大や辺縁の鈍化がみられることがあるが、表面は平滑である。
- 肝実質のエコーレベルが低下することがある
- 肝実質エコーレベルの低下した例では相対的に門脈壁の輝度が上昇する。
- 脾腫を伴うことが多い
- 胆嚢内腔の狭小、胆嚢壁の肥厚がみられることが多い。
- 腹腔内リンパ節の腫大(総肝動脈幹リンパ節(No.8)、肝十二指腸間膜内リンパ節(No.12))
ひとくちメモ
- 肝実質のエコーレベルが低下するのはなぜ?
急性肝炎では肝細胞が浮腫状(風船化:ballooning)になり、膨化した肝細胞の密集により、超音波の透過性がよくなるとされる
- 肝内の門脈壁がギラギラと目立つのはなぜ?
前述したように肝実質の超音波透過性がよくなると、門脈壁との音響インピーダンスの差が大きくなり、その境界での反射が強くなるためである。また、門脈枝周囲のグリソン鞘に炎症細胞が浸潤し、グリソン部分が厚くなることも、より壁を目立たせる要因になっていると考えられる。このような所見は、centri-lobular patternやstarry-sky signなどとよばれることがある。
- 急性肝炎で胆嚢壁の肥厚や、胆嚢内腔が虚脱するのはなぜ?
胆嚢壁肥厚の原因には、一時的な門脈圧亢進説や胆嚢リンパ流のうっ滞によるという説があり、これらが重なって起こると考えられる。また、肥厚した胆嚢壁でも特に肝に接する側が厚くみられることがあり、肝の炎症の波及によることも考えられる。
胆嚢内腔の虚脱は、急激な肝機能低下により胆汁の生成も低下し、ゆえに胆嚢に貯蔵されるべき胆汁量が減少するためと考えられる。
日超検腹部超音波テキストを主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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