腎結石 renal stone
腎盂腎杯内に音響陰影を伴うストロングエコーを示す。シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石が約80%と多く、X線陰性結石である尿酸結石、シスチン結石、キサンチン結石も、超音波で描出可能である。
尿管結石 ureteral stone
尿管内に音響陰影を伴うストロングエコーを示し、尿管の生理的狭窄部(腎盂尿管移行部、尿管総腸骨動脈交差部、尿管膀胱移行部)に多く腎側の尿路の拡張を伴う。
下部尿管結石の尿管膀胱移行部結石は、膀胱を音響窓として走査する。尿管膀胱移行部に尿管拡張を伴う結石が高エコーとして描出される。腹部単純X線写真では下部尿管結石と静脈石灰化との鑑別が問題となるが、超音波では尿管が確認できるので鑑別は容易である。
下部尿管結石は水腎症を伴わない場合があり、尿管結石が疑われる場合は、膀胱に尿を溜め下部尿管結石の有無を観察する必要がある。小さな結石は音響陰影が不明瞭である。
水腎症 hydronephrosis
尿の通過障害により腎盂腎杯が拡張した状態で、腎中心部エコー像が解離し無エコー域を示す。高度の水腎症では、腎盂腎杯は嚢胞様に拡大し腎実質が菲薄化する。
結石、腫瘍などの原因疾患を追求する。また水腎症に内部エコーがあれば血腫や膿瘍、腎盂腫瘍が疑われる。
- エレンボーゲンの分類
- 0度:腎盂腎杯の拡張なし
- 1度:軽度水腎症、CECの解離
- 2度:中等度水腎症、CECの明瞭な解離
- 3度:高度水腎症、腎実質の菲薄化
腎嚢胞 renal cyst
類円形を示し、内部エコーがなく、後方エコー増強を伴う。
腎盂腎杯部にできる嚢胞は傍腎盂嚢胞(parapelvic cyst)と呼ばれる。
嚢胞内に出血や感染などを合併したものはcomplicated cystと呼ばれ、内部エコーを認める。
多発性嚢胞腎 polycystic kidney
両側腎に多数のさまざまな嚢胞を形成する疾患。腎実質は薄くなり、CECも不明瞭となる。多数の隔壁を有する嚢胞で、この隔壁に腎芽腫細胞が存在することがある。
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)
- 常染色体優性遺伝
- 肝臓、膵臓、卵巣に嚢胞が合併することが多い。
常染色体劣勢多発性嚢胞腎(ARPKD)
- 常染色体劣勢
- 集合管の拡大により微小嚢胞が形成されるため、嚢胞壁の反射により内部エコーは高輝度となる。
肝膵脾にも嚢胞が見られ(特に肝嚢胞の合併が多い)多嚢胞病(polycystic disease)と呼ばれる。嚢胞のうち、充実性エコーを呈した所見があればCTなどにより質的診断が必要である。
腎血管筋脂肪腫 renal angiomyolipoma AML
血管、平滑筋、脂肪成分よりなる過誤腫で、境界明瞭な類円形の高エコー腫瘤像を示す。血流信号は乏しく、脂肪成分が少ないとエコーレベルは低下する。また大きいものでは内部エコーは不均一となり腎外側へ突出する場合もある。
正常変異- ベルタン柱 Bertin’s column
腎皮質の腎柱(ベルタン柱)の過形成で、エコーレベルが低く腎中心部高エコー像を圧排すると腫瘤様に見える。鑑別点は、ふぉうぶいのエコーレベルが他の皮質部と等しいこと、相接する髄質と弓状血管に異常を認めないことを確認。また腎盂腫瘍と異なり、腎盂腎杯の拡張を認めない。
重複腎盂尿管 duplicated renal pelvis and ureter
ひとつの腎内に重複した腎盂が存在する。それぞれの腎盂から尿管が出て、尿管が膀胱まで分かれている完全型と、途中で合流する不完全型がある。完全型では上位腎盂尿管は下位腎盂尿管より末梢に異所開口する。
馬蹄腎 houseshoe kidney
融合腎の1つで両腎下極が融合した先天性奇形で、馬蹄形をなし、両腎の長軸は逆ハの字となる。融合部を峡部と呼び、尿管は峡部の腹側を走行する。
両腎の位置は通常より低く、大動脈の前方に峡部が見られることも、また左右総腸骨動脈のレベルであることもある。尿管が峡部の前面を走行するため、しばしば尿路通過障害を起こし、水腎症、尿路結石、感染を合併する。
検査をしていて思うこと
腎は肋骨や腸管ガスに囲まれているため死角になる場所が多いため、腹側から、背側からと多方向から観察するようにする。腎から突出する嚢胞や腫瘍も多いので辺縁までしっかり観察する。
体の内側の疾患は深部になるので見づらいし、外側の疾患は多重反射で見づらい。周波数を下げたり、高周波プローブに持ち替えるなどしてベストの条件で観察する。
音響陰影をあまり伴わない高エコー像を見たときに腎結石か、CECの一部を見ているのか、嚢胞の反射を見ているか迷うことが多い。
腹部超音波ポケットマニュアルを主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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