胆嚢癌

胆嚢胆管

胆嚢癌 gallbladder carcinoma

胆嚢癌は胆嚢と胆嚢管から発生する癌である。60歳以上の女性に多くみられ、胆嚢結石の合併率が高い。初期は自覚症状に乏しく、右上腹部痛、黄疸、腹部腫瘤が契機となり、以前は発見時には進行癌であることが多くみられた。特に、胆嚢の壁は粘膜筋板と粘膜下層が欠如するので病態の進行が進みやすい。

最近では、超音波検査の普及により早期の癌も多く発見されるようになってきている。危険因子として、胆管非拡張型の胆管膵管合流異常があげられる。

組織学的分類では腺癌が90%以上を占め、他に扁平上皮癌、未分化癌などがある。

超音波所見

胆嚢癌取扱い規約(肉眼的形態分類)では、乳頭型、結節型、平坦型、充満型、塊状型、その他の型に分類される。超音波検査による分類は、隆起型(腫瘤形成型)、壁肥厚型(浸潤型)、混合型に分けられることが多い。

隆起型(腫瘤形成型)

  1. 胆嚢内腔へ隆起する乳頭状あるいは結節状の病変である
  2. 胆嚢壁と接する部分は有茎性であるが、広基性や丘状隆起もみられる
  3. 腫瘤部の表面は、小隆起では平滑~不整であるが、大きな腫瘤では乳頭状~不整を呈する
  4. 腫瘤のエコーレベルは胆嚢壁と同等ないしやや低エコーのことが多い
  5. 病変周囲に腫瘍進展を反映する丈の低い内側低エコー層の肥厚を伴うことがある

壁肥厚型(浸潤型)

  1. 表面不整あるいは乳頭状を呈し、内腔側の境界が不明瞭となることが多い
  2. 内部エコーは不均一であり、不整な低エコー領域を認める
  3. 病変部の壁の層構造は不明瞭となり、その厚みも不均一となる
  4. 胆嚢壁の不均一な肥厚が認められる
  5. 肝への直接浸潤をきたすことが多い
  6. 浸潤型は、胆嚢壁内に浸潤性に発育して壁肥厚をきたすもので、壁肥厚型ともいわれる

混合型

  1. 隆起型と壁肥厚型の混合型で、比較的大きな腫瘤像としてみられる
  2. 胆嚢壁は一部隆起し、不均一な肥厚も伴っている
  3. 胆嚢の輪郭が不整である
  4. 胆嚢内腔は不鮮明かつ消失することも多い
  5. 周囲臓器(肝や腸)との境界は不明瞭化することがある

鑑別疾患

  1. 胆嚢腺筋腫症:腫瘤内部にRASを反映する小さな嚢状構造や壁内結石、さらにコメット様エコーの存在は胆嚢腺筋腫症を考慮する
  2. 胆泥:体位変換や経過観察で形状の変化がみられる。ドプラ検査で血流を認めないときは胆泥を考慮する
  3. 胆嚢炎:粘膜上皮の変化でないため、表面は比較的整で層構造が温存されていれば胆嚢炎を考慮する

胆嚢腫瘤の鑑別に役立つ検査

胆嚢に腫瘤性病変を認めると、さらに鑑別のために検査が進められる。各モダリティの特徴と意義を知ることは、超音波検査にも役立つ。

EUS(超音波内視鏡)

  • 通常の内視鏡検査と同様に行われる。
  • 胆嚢に接する十二指腸壁を介して胆嚢を観察することで、詳細な情報を得ることができる。
  • 胆嚢ポリープの良性、悪性のおおよその判断が可能であるとされる。

CT

  • 造影剤を用いることで、腫瘤の血流状態や周囲への浸潤の程度を観察できる。
  • 近年のマルチスライスCT装置では短時間で広範囲を撮影できる。
  • 画像再構成により任意の断面像を得ることも容易。

DIC(DIC-CT)

  • 造影剤をゆっくり点滴静注し、順行性に胆道造影を行う。
  • 胆汁の分泌嚢に左右されるため、黄疸がある場合は施行できない。
  • CTでの3次元再構成画像で、胆嚢と総胆管の位置関係や胆嚢管の走行がわかる。
  • 胆嚢切除前に施行されることが多い。

MRI

  • 造影剤を用いずに胆嚢や総胆管を観察できる(MRCP)
  • 胆管の閉塞部位の観察が容易である。
  • ERCPが禁忌の急性膵炎患者にも施行化膿である。
  • 被爆はないが、強力な磁石や電磁波を用いているため、体内にペースメーカーなどの電子機器類や磁性体がある患者には施行できない。

ERCP

  • 内視鏡を十二指腸のファーター乳頭まで挿入する。
  • ファーター乳頭からカテーテルで造影剤を注入し、逆行性み胆嚢の粘膜構造を確認する。
  • 急性膵炎での検査は禁忌となる。

日超検腹部超音波テキストと超音波検査士認定試験対策臨床編:消化器領域を主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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