耳下腺悪性腫瘍
悪性腫瘍は耳下腺腫瘍の20~35%を占める。2005 年WHO分類で唾液腺悪性腫瘍は23種類の組織型に分類され、さらに組織型のなかにはさまざまな悪性度を有するものがあり疾患分類は複雑である。病理組織学的悪性度は臨床的悪性度をほぼ反映しており、治療前に悪性であることと、その悪性度を見極めることが重要である。悪性度は通常、低、中、高悪性度の3段階に分類される。
臨床所見
高悪性度の腫瘍では、急激な増大傾向があり、また、周囲組織への浸潤のため、可動性不良、 皮膚の発赤、疼痛、顔面神経麻痺、頸部リンパ節転移といった随伴症状を伴うものが多く、画像上も悪性腫瘍として診断できるものが多い。
一方、低~中等度の悪性度のものでは、被膜を有し、周囲組織への浸潤がないか、あっても軽度のため、臨床所見上も、画像上も、良性腫瘍との鑑別が困難なことがしばしばある。
超音波診断では、腫瘍の形状、境界、内部の所見や血流分布を詳細に観察できるため、いくつかの悪性腫瘍を疑わせる部分的な所見を捉えることができる。
超音波所見
高悪性度の腫瘍では、被膜を有さず、周囲に浸潤するものが多く、境界不明瞭、形状不整である
一方、低~中悪性度の腫瘍では、被膜を有し、境界は明瞭なものが多いが、部分的に境界不明瞭で形状不整なもの、内部エコーが不均質なものは悪性腫瘍を疑う所見といえる。
部分的な所見を捉えるためには、1つの断面だけでなく、複数の断面で腫瘍の全体像を十分に観察することが重要である。
カラードプラ法では、腫瘍の浸潤部分の先端で血流シグナルが認められることが多い。
鑑別のポイント
高悪性度の腫瘍では炎症症状を伴うものがあり、この場合単純な炎症性変化との鑑別を要する。一方、低悪性度の腫瘍では、良性腫瘍との鑑別が難しいものがある。頻度は良性腫瘍が圧倒的に多いため、良性腫瘍の診断・治療の際に低悪性度腫瘍の存在を常に考えることが重要になってくる。
体表臓器超音波診断ガイドブックを主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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