甲状腺検査値
甲状腺の検査値には、TSH、FT4、FT3、TgAb、TPOAb、TRAb、Tg、カルシトニンの8種類がある
甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン(TSH)
甲状腺が産生しているホルモンはT4とT3である。普通に考えれば血中T4とT3が高値であれば甲状腺機能亢進症(甲状腺中毒症)、低値であれば甲状腺機能低下症となる。生化学検査値では検査値が高いか低いかで異常見分けることができるので、甲状腺ホルモンでも同様に考えてよいはずだが、なかなか簡単にはいかないことがある。
Total T4とFreeT4(FT4), Total T3とFreeT3(FT3)
甲状腺ホルモンは血中ではタンパクと結合して存在している。実際に意味を持つホルモンは、タンパクと結合していない遊離T4(FreeT4:FT4)と遊離T34(FreeT3:FT3)である。通常、血中のTotal T4とFT4は相関しているが、タンパクが増加した状態では相関が崩れてしまう。たとえば、妊娠中にはサイロキシン結合タンパク(TBG)が増加するため、血中TotalT4は増加するが、FT4はあまり変化しない。
つまり、日常臨床で測定すべき項目は遊離ホルモンであるFT4とFT3である。検査法が発達しかなり正確の測定できるようになったが、低濃度の物質を測定しているため測定値に軽度のバラツキがある。単純に甲状腺ホルモンの数値の高低だけで甲状腺機能を推測しづらい理由である。
TSH
TSHと甲状腺ホルモン(FT4,FT3)の関係(ネガティブフィードバック)は、甲状腺ホルモン値が下がってくるとTSH分泌が増え、反対に甲状腺ホルモン値が上がるとTSH分泌が抑制され、甲状腺ホルモン値を正常に保とうとするものである。前述したように甲状腺ホルモン測定値には一定のバラツキがあるため、TSHの値を組み合わせることによって甲状腺機能を正確に読み取ることができる。
下垂体に異常がなければ、甲状腺中毒症では甲状腺ホルモン高値、TSH低値になり、甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモン低値、TSH高値となる。当然甲状腺機能正常であればどちらも正常。この3つのパターンだけであれば検査値を読むときに迷いは生じない。
しかしそう簡単にはいかず、検査値を読むときに考慮すべき2つの現象がある。
1つ目は潜在性甲状腺中毒症と潜在性甲状腺機能低下症の存在である。正常との中間的な状態を意味している。
下垂体は血液中の甲状腺ホルモン濃度に鋭敏に反応するため、甲状腺ホルモン濃度が少しでも上がりかけるとTSHが減少し、甲状腺ホルモン濃度が下がりかけるとTSHが増加する。血中の甲状腺ホルモン値が正常範囲にあるのにも関わらずTSHが低値であったり、高値であったりする状態が存在するが、甲状腺ホルモンが正常でTSHだけが変化した状態を潜在性と呼ぶ。
甲状腺ホルモン濃度の増減で下垂体が敏感に反応するが、反応して一定の状態に落ち着くまでは時間がかかる。時間的にいうとTSHの反応はむしろ鋭いと言える。検査値を読むときに考慮すべき2つ目の現象がTSH変化のタイムラグがあることである。
たとえば、甲状腺中毒症では甲状腺ホルモン高値でTSHが低値になっているが、急に甲状腺ホルモンを正常化しても、しばらくTSH低値が続く。バセドウ病の治療開始時によくみられる現象である。また甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモン低値でTSHが高値になっているが、甲状腺ホルモン剤の補充を始めてもTSHの値が下がってくるのは時間がかかる。
甲状腺疾患の診断と治療を主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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