慢性膵炎 chronic pancreatitis
膵実質の破壊と脱落を伴う限局性または広範囲にわたる不均一な線維化が特徴である。このため、膵は委縮や形態の変性腫大を示し、膵管は不規則に拡張する。
慢性膵炎は成因によってアルコール性と非アルコール性に分類されている。
通常、慢性膵炎による組織の変化は不可逆的とされており、腫瘍などにより二次的に引き起こされた閉塞性慢性膵炎や、自己免疫性膵炎は治療により病態や病理所見が改善することがあり、可逆性である点から、現時点では膵の慢性炎症として別に扱われる。
超音波所見
- 膵管内の膵石(確定所見):膵管内に音響陰影を伴う高エコー
- 膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化(確定所見):この場合の膵全体に分布する石灰化とは、膵頭部から尾部に分布する複数の石灰化であり、膵辺縁や膵の一部に認められる石灰化は該当しない。
- 膵の腫大・萎縮:一般に腫瘤形成様の場合には腫大するが、線維化が進むと萎縮する。その場合には、膵石や膵管の拡張を高率に伴っている。
- 膵の変性と辺縁凹凸不整:膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコーまたは膵管の不正な拡張を伴うもので、辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変性がある。(準確定所見)
- 膵管の拡張:内腔2㎜を超える。
- 仮性嚢胞:実質の壊死組織の融解により仮性嚢胞が形成される。また、膵管閉塞による膵液のうっ滞は停滞嚢胞をもたらす。
超音波検査に役に立つ疾患の特徴
膵石は慢性膵炎のおよそ4割に見られる
→アルコール性膵炎で特に多い
→膵石の原因は、アルコールの多飲、高カルシウム血症など
男女比は4:1で男性に多い
慢性膵炎臨床診断基準2009の要点
特徴的な画像所見
<確診所見>
- 膵管内の結石
- 膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化
- ERCP像で、膵全体に見られる主膵管の不整な拡張と不均一に分布する不均一かつ不規則な分枝膵管の拡張
- ERCP像で、主膵管が膵石、蛋白栓などで閉塞または狭窄しているときは乳頭側の主膵管と分枝膵管の不規則な拡張
<準確診所見>
- MRCPにおいて、主膵管の不整な拡張とともに膵全体に不均一に分布する分枝膵管の不規則な拡張
- ERCP像において、膵全体に分布するびまん性の分枝膵管の不規則な拡張、主膵管のみの不整な拡張、蛋白栓のいずれか
- CTにおいて、主膵管の不規則なびまん性の拡張とともに膵辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変性
- EUSにおいて、膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコーまたは膵管の不整な拡張を伴う辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変性
慢性膵炎臨床診断基準2009
慢性膵炎の診断項目
①特徴的な画像所見
②特徴的な組織所見
③反復する上腹部痛発作
④血中または尿中膵酵素値の異常
⑤膵外分泌障害
⑥1日80g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴
慢性膵炎の確診:a,bのいずれかが認められる
a. ①または②の確診所見
b. ①または②の準確診所見と、③④⑤のうち2項目以上
慢性膵炎の準確診:
①または②の準確診所見が認められる
早期慢性膵炎:
③~⑥のいずれか2項目以上と早期慢性膵炎の画像所見が認められる
日超検腹部超音波テキストと超音波検査士認定試験対策臨床編:消化器領域を主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント