慢性肝炎 chronic hepatitis
臨床的に6か月以上持続する肝機能検査値の異常と、組織学的には門脈域を中心にリンパ球浸潤と線維性拡大を認める病態をいう。わが国では肝炎ウイルスによるものを指すのが一般的である。
慢性肝炎は活動性(A分類)と線維化(F分類)の程度によって分類される。
肝炎ウイルス
A型肝炎は、生ガキや海産物などからの飲食性感染が多いが、最近では海外渡航先での感染やドラッグ使用者間の感染が増加傾向にある。通常は1~2か月で軽快し慢性化することはない。ただし、高齢者が感染した場合には重症化することもあり、注意が必要である。
B型肝炎は、持続性感染と一過性感染に分けられる。持続性感染は主として垂直感染であり、HBVキャリアでHBe抗原陽性の母親から出産時に感染する。一過性感染は、ほとんどが性交渉や血液汚染された医療器具などから感染し、6か月以内の潜伏期を経てHBe抗原が陽性化するが、その陽性期間は6か月を超えない。すなわち、B型慢性肝炎は持続性感染のキャリアから発症する。しかし現在では、母子間における垂直感染の予防により、16歳以下のHBVキャリア率は0.02%ときわめて低い。肝硬変の原因としても、B型肝炎由来のものは10~20%程度で、ほとんどはC型肝炎由来である。
C型肝炎は、血液を介して成人期に感染することが多いが、急性期は臨床症状に乏しく、高率に慢性化するのが特徴であり、その多くが肝硬変や肝細胞癌に進行する。現存の患者は過去の輸血から感染した例が多いが、1989年以降は供血者血液の抗体スクリーニングが実施されたため、輸血後の肝炎はほとんどみられない。
超音波所見
- 肝縁の鈍化を認める
- 表面は平滑~軽度不整を呈する
- 肝実質エコーは軽度粗雑を呈する
- 活動性では脾腫を伴うことが多い
- 総肝動脈周囲や肝門部のリンパ節腫大が認められることがある
ひとくちメモ
- 慢性肝炎で、肝実質エコーが上昇してみえることがあるが、その成因は?
ウイルス性慢性肝炎の組織学的特徴として、門脈域への炎症細胞の浸潤や門脈域の拡大を伴う線維化、肝細胞の変性などがあり、これらにより組織構築が乱れ、肝全体に軽度の超音波の散乱や減衰が生じると考えられる。
これらの不規則な超音波の反射がフォーカス点を中心に、エコーレベルの高い領域として認められるようになる。フォーカスの合っていない近位部や遠位部では輝度の上昇があまり目立たない。このような所見は、fatty-fibrotic patternとよばれることもある。
- B型とC型の慢性肝炎でエコー所見に差はあるか?
一般にB型慢性肝炎では、結節形成傾向が強く、C型慢性肝炎に比べて肝実質のエコーパターンは粗雑にみえることが多いが、実質のエコーパターンだけから原因ウイルスを特定するのは困難である。
- 総肝動脈周囲にリンパ節が認められれば、肝機能障害があると考えてよいか?
肝機能障害を有さない正常者であっても、総肝動脈周囲にリンパ節の腫大がみられることがある。これは総肝動脈周囲のリンパ節は肝左葉を音響窓として超音波が入射しやすく総肝動脈も目印になり、他の部位よりもリンパ節をみつけやすいことが考えられる。ただし、慢性肝障害を有する群では高率にリンパ節が認められ、そのサイズも有意に大きい。
超音波検査に役立つ所見
慢性肝炎から肝細胞癌は高頻度に発生する。
→形態学的変化とともに、肝細胞癌を小さいうちに見つけることが重要である。
肝炎の成因は多彩だが、その超音波像に特徴的な所見はない。
→逆にいえば、肝炎の超音波所見からその原因を特定することは難しい。
日超検腹部超音波テキストを主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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