急性膵炎 acute pancreatitis
膵臓が分泌する各種の消化酵素が何らかの原因により膵組織内で活性化され、膵臓自身が消化されてしまう状態である。
発症原因は胆道疾患性とアルコール性のものが圧倒的に多い。また、明らかな原因のわからない突発性急性膵炎も認められる。急性膵炎は病理組織上以下の3つに分類される。
- 間質性膵炎(浮腫性):最軽症型
- 脂肪壊死型膵炎:軽~中等度型
- 実質壊死型膵炎:重症型(壊死部は感染により膿瘍を作る)
急性膵炎の患者を検査する場合、痛みや炎症の波及による消化管ガスのため描出は容易ではない。また炎症が軽度の場合には、その変化を捉えることが困難な場合が多い。しかし超音波検査は膵炎の原因となる基礎疾患の検出や重症度の判定、回復時の病気に応じた変化を観察するには優れた検査法である。
超音波所見
<直接所見>
- 膵のびまんおよび限局腫大:膵体部の前後径が3cm以上
- 膵輪郭の不明瞭化:炎症が膵外に波及した場合
- 実質のエコーレベル低下:軽度の炎症の場合で膵の浮腫を示唆する
- 実質エコーの混合パターン:高度の炎症の場合で出血や壊死を反映
- 主膵管の非拡張:通常主膵管の拡張は認めないが、乳頭部に結石が嵌頓した場合は平滑拡張を見ることがある
<間接所見>
- 膵周囲の低エコー域または液体貯留
- 膵仮性嚢胞
- 胸水、腹水
- 胃壁の肥厚、麻痺性変化
- 門脈の圧排、閉塞、血栓
なかでも、特徴的所見の一つとして捉えられる仮性嚢胞の一部は、膵周囲の液体貯留の量が増え、この液が吸収されず被包化されたものと考えられる。初期では不整形を示すが、時間の経過とともの境界が明瞭化し球形を呈するようになるなど、その状況に応じて観察される。またCTで観察される膵後方への炎症の観察も超音波である程度可能である。膵背側への炎症波及は、前傍腎腔~腎筋膜~腎周囲腔へと進んでいく。したがってまず左腎前方、右腎周囲、左腎後方、骨盤腔の順に液体貯留がみられることを念頭に入れておく。
急性膵炎診療ガイドライン2010の要点
- 男性の発生頻度は女性の2倍
- 日本では男性はアルコール性膵炎、女性は胆石性膵炎が多い
- アルコール性膵炎の再発率は約50%弱、胆石性膵炎で胆石未治療の場合は約30~60%の急性膵炎再発率
- 急性膵炎後の慢性膵炎への移行率は、約3~15%といわれる
- 日本における急性膵炎の死亡率は、死亡率全体の約3%
- 最重度の膵炎では30%以上の死亡率
日超検腹部超音波テキストと超音波検査士認定試験対策臨床編:消化器領域を主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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