バセドウ病
バセドウ病は、英語圏ではグレーブス病(Graves‘ disease)と呼ばれるが、甲状腺中毒症の原因疾患として最も頻度の高い自己免疫疾患である。甲状腺刺激活性を持つ抗甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体抗体(TRAb)によって甲状腺機能が亢進し、びまん性甲状腺腫をきたす。
甲状腺外症状として眼球突出などの眼症状、脛骨前粘液水腫などの皮膚症状を伴うことがある。幅広い年齢層に発症するが、女性には男性の約4倍多くみられる。
FT3、FT4の上昇、TSHの抑制に加えてTRAbの検出によって診断されることが多いが、未治療バセドウ病の約3~4%の症例ではTRAbが陰性であることに注意を要する。TSHが抑制された状態で放射性ヨウ素の取り込みがびまん性に亢進していればバセドウ病と確定診断できる。
超音波診断
バセドウ病の診断における超音波検査の意義は、びまん性甲状腺腫の大きさの評価、結節性病変合併の診断、破壊性甲状腺中毒症との鑑別に集約される。
甲状腺腫の大きさは症例ごとにさまざまである。超音波による甲状腺体積測定は、甲状腺腫大の評価や、放射性ヨウ素内用療法での投与量決定に有用である。内部エコーは不均質で、エコーレベルが低下することが多い。
びまん性甲状腺腫をきたすもう一つの疾患は慢性甲状腺炎(橋本病)であるが、甲状腺の大きさや内部の性状からはバセドウ病と鑑別できないことがしばしばある。
びまん性甲状腺腫のなかに結節性病変を合併していても触診では検出できないことがある。したがって、超音波検査で結節合併の有無を確認することは治療方針を決めるうえでも重要である。
未治療のバセドウ病では、びまん性に著明な血流信号の増加を認める。超音波ドプラ法を用いたバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別については多くの報告がある。
上甲状腺動脈の最高血流速度を測定し45cm/secをカットオフ値とすると、感度83.7%、特異度92.3%で未治療バセドウ病と破壊性甲状腺中毒症を鑑別できると報告がある。
ドプラ法で甲状腺内の血流信号の多寡をみる方法は簡便であり、典型的な未治療バセドウ病では甲状腺内部の血流信号の増強がみられ、無痛性甲状腺炎では破壊巣において、血流信号が消失する。
バセドウ病の診断ガイドライン
a)臨床所見
- 頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
- びまん性甲状腺腫大
- 眼球突出または特有の眼症状
b)検査所見
- 遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値
- TSH低値(0.1μU/ml以下)
- 抗TSH受容体抗体(TRAb)陽性、または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性
- 典型例では放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性
- 1)バセドウ病
- a)の1つ以上に加えて、b)の4つを有するもの
- 2)確からしいバセドウ病
- a)の1つ以上に加えて、b)の1、2、3を有するもの
- 3)バセドウ病の疑い
- a)の1つ以上に加えて、b)の1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3ヶ月以上続くもの
【付記】
- コレステロール低値、アルカリホスファターゼ高値を示すことが多い。
- 遊離T4正常で遊離T3のみが高値の場合が稀にある。
- 眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが、遊離T4およびTSHが基準範囲内の例はeuthyroid Graves’ diseaseまたはeuthyroid ophthalmopathyといわれる。
- 高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする。
- 小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さ等を認める。
- 遊離T3(pg/ml)/遊離T4(ng/dl) 比の高値は無痛性甲状腺炎の除外に参考となる。
- 甲状腺血流増加・尿中ヨウ素の低下が無痛性甲状腺炎との鑑別に有用である。
甲状腺超音波診断ガイドブックを主に参考にして勉強して作成しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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